Japanese American Issei Pioneer Museum
日系一世の奮闘を讃えて

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  物語 - 一世関係
26 - 一世のための和英辞典 一柳松庵
 
             
 

一世のための和英辞典

〖 通俗実用 和英いろは字引 〗  巻頭の辞 一柳松庵(譲二)

外国語は多く口と耳によるものであるが、兎角耳の慣熟する割合に口は練達せぬものである。然るに、かの支那人は一種独特奇怪至極の英語をば臆面もなく寧ろ大胆に濫用して、而かも着々其用を弁じてをる。蓋し彼の英語なるものは断じて倣ふべからずだが、其達意用弁の趣旨に至りては実 ( げ) にこそ彼の長所、須らく我れ之を採るべしで、なかんづく在米我が同胞の特に服庸すべき要件なりと確信する。

      明治三十六年三月 

      在米 桑港パイン街千五百廿七番

 

この和英辞典は、日本語を英語に翻訳した後に、その英語の読み方をカタカナで書いて、英語の基礎のない人が英語を使いやすいようにしている。たとえば、「一月」 は 「 January ジャニュアリー」、「日当」は「daily wages デーリーウエージス」、「二階」は「second story セカンドストーリー 又は upstairs アプステーア」である。

この外、この字引にはアメリカでの生活に必要な知識が付録として巻末に掲載されている。タテ 15 センチ、ヨコ6.5 センチ、厚さ3 センチ、全体で五百ページの小さな字引だが、多くの一世がこの字引の恩恵を蒙ったことは想像に難くない。一世及び日本からアメリカ渡航希望者の間でよく売れたとみえて、明治36 年6 月(1903)の初版後も再版が続いて、この資料館にある明治39 年(第七版)の辞書も表紙は色あせて、しかもヨレヨレで日本人アメリカ移民史の側面を物語っている。

編者、一柳松庵はこの辞書の出版に先立って、日本からアメリカ渡航を計画している人のために渡米案内書  〖 渡米の栞 〗 (とべいのしおり) を 1902 年に出版している 。 (竹村)

 

 
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